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居眠り岩

2018/06/01

あれは確か中学3年の頃で学校が終わった放課後に別の学校の友達のAの家に遊びに行った時の話。
学校からは友達の家まではかなり遠く、クタクタになりながらもAの家まで行った。
俺はAと話していて、急にホラー映画の話題になった。
それが皮切りに話は盛り上がり、
「なぁ、この辺にそういう場所はあるのか?」
と俺は聞いた。
Aはニヤニヤしながら、
「あぁ、あるぞ」
と答えた。
Aは更に言葉を加えて、
「この辺じゃ結構有名な場所だ」
と答えた。
Aの話によると、そこはAの家から10分くらいの距離の神社らしい。
早速そこに行ってみると、あるのは古びた社に京都の庭園とかにありそうな1メートルくらいの岩。
「何もないじゃないか?」
と俺が言うと、Aは
「あるじゃんか、それだよ、その岩」
とさっきの岩を指差す。
「そろそろ教えろよ」
ともったいぶるAに苛立ちを覚える俺。
少しニヤニヤしていたが、やっと話す気になったのか、真剣な顔をして話し始める。
「これは俺のじいちゃんから聞いた話なんだけど、この岩は今までこの神社で住職を務めてきた人の墓石らしくてな、この辺じゃ居眠り岩って呼ばれてるんだ」
いまいちピンと来ない名前に俺は首を傾げたが、Aは気にせず話を続ける。
「やり方は確か、岩を三回叩いた後、『和尚さん、朝ですよ』というんだ、簡単だろ?」
と肩をすくめながら言う。
「じゃあ早速やるか」
と俺が岩に近づこうとすると、Aがいきなり止める。
「一つ言い忘れてた、これは朝方とかならご利益があるらしいが、夕方や夜分にやっちゃ駄目らしい、坊さんが怒るらしいから」
別に坊さんが怒っても怖くないと、二人でAの言った事を試した。
しかし、何も起こらない。
やっぱり何もないかと思い、Aとはその場で別れ、俺は家に帰った。
家に帰った俺は夕飯を食べた後、部屋に戻ると妙な匂いが漂ってる。
お香というか、部屋を密閉して、その中で線香をしこたま焚いたような感じに線香の匂いがする。
俺は窓を全開にしてれば消えると思い、窓を開けてそのまま部屋の中にいたんだが、一向に消えない。
部屋に兄が入ってきたから、兄にこの匂いについて聞いたが、そんな匂いはしないといわれた。
妙な胸騒ぎがしたが、あえて無視して、そのまま部屋にいた。
それで9時だったか、携帯が鳴り、電話に出るとAからだった。
俺は、
「どうした?」
と聞くと、
「お前、家に帰ってから何かあったか?」
と聞いたきたので、俺は部屋を漂う匂いの事を話すと、驚いたような口調で、
「俺の部屋もだよ」
とかなり焦った声色で話す。
「実はじいちゃんにこの事を話したんだけど、かなり怒られてさ、下手すりゃ取り憑かれるって」
「取り憑かれるってただごとじゃないか」
と返す。
「そう焦るな、何とかする方法がある」
と更に続ける。
方法はこうだ、寝る前に湯呑にお茶を一杯、小皿に漬物を装った物、そして茶碗一杯のご飯と味噌汁、更に『朝御飯です』と書いた紙を机に置いた状態で眠るという物。
俺は早速用意して、机に置いた後、疲れたので寝た。
それから朝の4時ごろだったか、俺は物音が気になって、目を覚ました。
音は机から聞こえたから、机に目を向けた瞬間、俺は凍りついた。
そこには、人型の霧状の物体が物凄い勢いで用意した飯を食べている。
俺は首だけを起こした状態でその様をじっと見ていた。
霧はこちらに気づいたのか、急に食べるのをやめて、こちらを向く。
霧は俺のほうに歩み寄り、すぐ横まで来たところで止まり、俺の耳元で、
「おこすなよ」
と一言だけ告げた後、再び机に戻り、用意した飯を食べ続け、食い終わるとフッと消えた。
その後、Aとはこの話は二度としまいと誓った。

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