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嫉妬する幽霊

2018/05/31

成人式ってことで同窓会があったんだけど、そこに来なかった友達Aがいてさ、そいつと一緒の地域で住んでる他の友達Bが言うには、あいつは色々あって病院で入院してるんだと。
そいつとは厨房のとき仲が良くて、ちょっと気になったんでその他の友達Bに詳しく聞いてみた。
Aは普通にアルバイトをしているフリーターだった。
ただ親の言うことを聞かないで勝手にちょっと都会に住んでたんで、異常に家賃が安い賃貸アパートに住んでいた。
Aは全く霊感は無い。
しかしそのアパートにはよっぽど凄いヤツが憑いていたのか、Aも異変を感じ始めた。
部屋に入ってのんびりテレビを見ていたら、隣のカーテンに凄い膨らみが出来てた、とか朝起きると自分の顔を覗き込んでるうっすらとした女の人の顔が見えた、とかありきたり?な話が現実に起こってたらしい。
それでも肝が据わってるのか能天気なのか、幽霊は結局何もしてこない!という信念の基、普通に生活してたんだ。
それがある日を境にその状況が一変した。
それはAに彼女が出来た日のこと。
彼女が出来たその日、喜んで家に帰ると何か空気が違ったらしい。
言いようの無い、明らかな何かが。
だからといって特別何をするわけでもない。
彼女ができたことに浮かれたAは気にせずそのまま床についてしまった。
その日Aは金縛りにあった。
またうっすら女の顔が来るんだろ、と構えてたAは目を開いてみると、
女の顔がこの世のものとは思えない顔でこっちを睨んでいる。
しかも今までのようにうっすらとはしていない。
本物のような質感、吐息、形相でこちらを睨んでいる。
思わずAは固まってしまった。
女は何も言わない。
ただ睨んでいる。
Aは半ばヤケクソで、目をつぶって大声で
「誰やお前!知らん!知らん!」
と叫ぶと、次目を開けた時には、女はいなくなっていた。
それ以後その女の霊は、部屋だけじゃなく外でもよく自分の視界に入るようになっていた。
ある日はコンビニで立ち読みしてたら目の前のガラスに女の顔が映ったとか、ある日は人ごみの横断歩道を歩いていたら向こうから女が睨みながら歩いて来たとか。
しかし、ある時だけはAの周りに現れないことがわかった。
Aが彼女と会っている間だった。
幽霊は何もしてこない!の考えのAでもそう毎回幽霊に脅かされては疲れるので、彼女の頻繁に会うようになった。
すると心なしか女の出る回数が減ったので、Aは助かったと思った。
そしてある日、彼女と飲みに行った帰りのことだった。
その日は居酒屋に行って、その後バーにいって軽く酔いを醒ましてから彼女をバイクで家まで送る予定だった。
バーから出たあと、彼女を家まで送ろうと後ろに乗せ、バイクで走り出す。
彼女を無事家の前まで送りつけて、降ろす。
Aはまだ軽く酔っていて、早く寝たかったので、彼女が何か言おうとしていたのをシカトしてすぐ家に帰ろうとした。
Aはそのままボーっとバイクを走らせる。
彼女の家から五分くらい経ったあと、ふと、Aは気付く。
あれ?何で後ろに人乗ってんだ!!?
Aは一気に酔いが覚めた。
彼女はさっき降ろした。
そして今俺は家に向かっている。
ならこの後ろから俺を抱えている奴は・・・!?
フルフェイスのヘルメットをかぶってバイクに乗っているのに若い女の囁くような不気味な声が聞こえる。
「わたしじゃだめなの」
Aは気を失いそうになったが、何とかこらえて大声でこう言った。
「うるさい!うるさい!俺は○○(彼女の名前)がいいんだよ!!!」
Aは後ろの奴を振り払おうと蛇行運転しながらバイクを走らせた。
するとフッ、と後ろの奴がいなくなった感覚がした。
助かったかぁ~、と思ってスピードを上げようとしたその瞬間
「あ゛ああ゛ぁぁぁあああ゛ぁぁぁあああああ!!!!!!」
とてもさっきの女のとは思えないごつい叫び声が耳に響き渡り、バイク前輪のホイールのサスペンションが一気に折れ、体ごと道路に吹っ飛んでしまったのだった。
そこでAの意識は途絶える。
気付いたらAは病院だった。
幸い右足が折れただけで命に別状は無かった。
Aは飲酒運転、ということにされたらしい。
その後彼女がお見舞いに来てこう言った。
「あの日、バーであなたのことをすっごく睨んでいた女の人がいたけどあの人は知り合いだったの?」
後日談
先日、Aから私に電話がかかってきました。
Aはその彼女との間に子供ができて、ついに結婚したとのこと。
それでアパートは変えて三人で今暮らしていて、女の霊はもう見ないらしいです。
今度飲みに行こうと誘われました。
ちなみにそのアパートは綺麗に改装して今も売りに出されてるそうです。
幽霊って脅かすだけじゃなく実力行使?に出る場合もあるんですね。

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