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漆黒の街

2018/05/23

ある日、残業を終えて自宅のある町に戻ると、突然、周辺の灯りが消え真っ暗闇になってしまった。
街灯もすべて消えてしまい、新月と重なった事もあり、町は墨を流したような暗闇。
深夜と言うこともあって、家の中からもほとんど灯りは漏れてこなかった。
目が慣れてくるとなんとか歩けるようになり、マンションまでは辿り着いた。
しかし、マンションの廊下や非常階段は更に暗く、手探りで歩くほかない。
こけつまろびつ自宅に到着。
鍵を開けて玄関になだれ込んだ瞬間・・・
『死ね』
耳元でドスのきいた男の声がした
『うわぁぁぁぁ』
何も見えない暗闇で両手両脚を振り乱し、リビングまで一気に走った。
ガラス窓から他の家のロウソクの灯火なのか、僅かな外光が差し込んで、部屋の様子がうすらぼんやりとわかる。
玄関からやってくるならここしかないという扉をガタガタ震えながら見つめていた。
携帯も無い。
電話も通じない。
大声で叫べばすぐに殺されそうな気もする。
闘おうにも武器を取りに行くときに出くわしそうで怖い。
いつしか気を失ってしまい、気づいたのは翌朝。
私以外だれもいなかった。
というより、誰が入った痕跡も無かった。
しかし、耳に息がかかるくらい近くでの声だった。
夢の筈がない。
後日、同じマンションの住人に聞いたところ、
『マンションが建つ前、ここには会社があったのですが、ある夜、強盗犯が警察に追われて逃げ込み、最後は追いつめられて四階から飛び降り自殺したそうです。』
管理会社に問い合わせたところ、その自殺をした場所がちょうど私の部屋のあたりだったのです。
ローンも残っていましたが、とっとと売り払いました。
それにしてもあの声は本当に恐ろしかった。

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