雪山の白い人
2022/11/23
私の知人に、山田(仮名)という、マタギと言うか、猟師の男がいた。
専業の猟師ではなくて、本業を別に持っている、季節限定猟師だ。
何年も前の冬、山田が連絡をよこした。
当時山田の山(彼の持ち山ではなくて、猟をする山)に、スキー場を作る話があって山田は環境保護団体と一緒に建設反対運動をやっていた。その運動に協力してほしいと言う。
既に山の北側にスキー場を視野に入れた県道が走っていたし、今さらどうこう言っても仕方ないような話だったのだけれど、仕事に絡みそうな話でもあったので土日を使って山田のところに行った。
土曜日は山田の家に一泊して一通り運動の説明を聞き、翌日予定地を見に行く事になった。
翌朝はスキーを履いて出た。山田と二人で予定地を見て、写真撮影をした。
午後には山を降りる予定だったのだが、帰る前にいいものを見せてやると言われて山田についてスキー場から少し外れた斜面に出た。
山田はザックの中からパンツとかシャツを出して持ってきたソリ(?)に縛り付けて斜面を滑らせた。
ソリはかなり滑ってから止まり、上から見るとかなり小さくなっていた。
しばらく下に行ったソリを見ていると、どこからか小学生くらいの背の高さをした白い人(?)がソリの周りに集まってきた。
動物かと思ったけれどどう見ても二本足で歩いていた。
そいつらは、数が集まるとダンゴ状に固まってソリにたかっていた。
「スキー場作ったら、あいつらにみんな食われるぞ」
山田はそう言っていた。
怪奇現象かと思ったがなにせ真っ昼間のことだからただ呆然と見ていた。
山は違うんだなと思った。
その後は別に何事も無く山田の家に戻った。
当時の私は仕事も油の乗っていた時期だったので、ややショックもありよくわからない事にかかわるのは止めた。
結局スキー場は出来てしまったし化け物が出たと言う話も聞かない。
それから疎遠になってしまったので今は年賀状以外で山田との連絡は無い。
今思えばファンタジーな世界に入れるチャンスだったのかもしれない。
後日談も無いよ。