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時を超えて届いた手紙

2020/07/03

東京に上京している専門学校生の友人から聞いた話です。
千葉県…といっても比較的東京寄りの地域に住んでいる女性がいました。
彼女は気立てがやさしく正義感の強い、25歳程の女性(A子さんとします)で、5歳年上の会社員の彼氏と同姓しており彼女自身も東京の都心に近い場所にある会社に某私鉄の東○線を利用してOLとして働いていたそうです。
2人の付き合いは長く、築20年を悠に超えるであろうアパートでの2人暮らしはすでに5年目を迎え、お互い口に出さないながらもそろそろ結婚も…との思いからか、ひそかにそれぞれ貯金しながら切り詰めた生活を送っていました。
年末も押し迫まったある日、彼が中心となって立ち上げたあるプロジェクトが大成功を収め、大仕事を成し遂げた彼は昇進したそうです。
仕事に自信が出てきた彼はこれを機会にA子さんへのプロポーズを決意し、A子さんも喜んで受け入れ2人は夫婦になる約束をしたのでした。

ある日、残業で遅くなったA子さんが足早に帰宅の戸に付くと玄関の郵便受けに便せんが入っているのに気が付きました。
数日前に結婚披露宴の資料の請求をしていたのでそれが送られてきたのかなと思いつつ手にとってみましたがどうもそうではないようです。
消印の日時は経年劣化のように擦り消えかかった状態で読み取れず、宛名欄に「○○(ある地方でしか見ないような特有の苗字)」となんとか読み取る事ができる、やけに古めかしい便せんである事に気が付きました。
A子さんとは苗字が違うので、配達員が間違ったのかなとふと考えてみたものの、自分達が住んでる部屋の両隣に住んでいる住人もその珍しい苗字ではない事に気づいたA子さんはおかしいなと思いましたが、気立ての優しい性格がそうさせたのか、彼女が住んでいるフロアにこの手紙の受取人がいるのでは…?と思い、一軒一軒尋ねて廻ってみたのです。
しかし、彼女が住んでいる2階フロアはもとより1階フロアにもその苗字の住人はいない事が判明しました。

A子さんは、おかしな事もあるもんだ…と思いつつもこの手紙を待っている人がいたらと思うと気軽に捨てる事もできず、アパートの大家にこの手紙について相談する事にしたのでした。
アパートの隣にある大家の家をA子さんが尋ねると70歳前後の男性の管理人が姿を現しました。
挨拶も程ほどにこの便せんを手渡しどうするべきか指示を仰ごうとすると、それを受け取った管理人の表情が微妙に引きつったように変化したのをA子さんは見逃しませんでした。
A子さんが問い詰めると管理人は重い口を開き語りだしました。
この便せんに書かれている○○という珍しい苗字の人間は今はA子さんが住んでいるアパートにはおらず、管理人さんが脱サラしてこのアパートを建てた20年前に最初の住人として住み着いた地方出身の夫婦の苗字と同じだという事です。
この管理人とも年が近い事もあって親しい友人のように付き合っていたそうです。
しかしその夫婦はすでに十数年前に実家に引越してしまったそうです。

便せんをこのまま捨ててしまう気持ちにはとてもなれず、失礼ながらも管理人さんはこの朽ち果てていると言ってもいい古ぼけた便せんを空けて中身を確認する事にしたのです。
そうする事で何か次に繋がる情報を得られるかも知れないと思ったからです。
中に入っている手紙には次のように書き綴られていたそうです…
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ここはどこだろう…耳を澄ましてみます。
そうか…ここは地下鉄?
体に感じるガタンゴトンという特有の感覚とトンネルの中とわかる騒音でそうだとわかりました。
お母さんともよく買い物に行く時に一緒に乗りましたね。
でもおかしい。
私は眠っていたの?
いつ地下鉄に乗ったのだろう?
具合が悪くて気を失ってしまったの?
何がどうなっているのかわかりません。
耳を澄まして周りを見てみると人の気配や電車の揺れる音が聞こえるのですが何かがおかしいです。
周りにはたしかに人がいるのですが顔が見えないのです。
勇気をだして声を出してみましたがだれも返事をしてくれません。
たしかに電車に乗って地下鉄を進んでいるのに何がどうなっているのかわからない。
そうだ…今何時だろうと思い時計で時間を確認しようとしても時計をしていないのに気づきました。
なにか大事な用事があったような気がします。
誰かいませんか?
気配は感じるのにあいからずだれも答えてくれません。
体の具合が悪いのだろうか。
漠然とそう思いながらもさらに何かおかしい事に気づきました。
いつまでたっても駅に着く気配がないのです。
声を出してだれかの反応を待ってもだれも答えてくれません。
目をつぶっているとふと視界が明るくなっていく感覚になりました。
やっと私が降りる駅に着いたみたいです。
駅名の標識を見ても目に見えなくてもはっきりと感じとることができます。
電車は停車しドアが開き私は降りようと立ち上がろうとしましたが足が動きません。
必死に動かそうとしてましたがダメでした。
まぁいいか次の駅で降りて折り返せばいいんだと思いながらも長い長い次の駅までの時間を過ごすことにしました。
でもダメなんです。
いくら駅につこうにも立ち上がることができないのです。
何時間いや何十時間、何日過ぎたでしょうか。
漠然と私は理解しました。
私は死んでいるんだ。
そうだ、手下げバックに手紙と鉛筆が入っているのに気がつきました。
わたしはもう戻れないのでしょう。
なので手紙を書く事にしました。
駅に停車したらドアの外に向かって便せんにいれたこの手紙を投げれば誰かポストに入れてくれるかもしれません。
切手も貼っておきますね。
お母さんお元気で、お父さんもね。
スケジュール帳に、七時…駅前…大橋さん…そうだ思い出した。
私は婚約者の大橋さんと待ち合わせしていたのね。
でももう遅いみたい。
切手は一枚しかないので大橋さんにもよろしくね。
さようなら。
------------------
そこで手紙の内容は終了していました。
管理人の話では今A子さん達が住んでいる部屋はこの手紙の送り主であろう女性の両親が住んでいた部屋だったのです。
20年前に書かれた?であろうこの手紙が現実に届くなんてありえません。

A子さんは図書館に走りました。
そして20年前の新聞を手当たりしだい読み漁りそして発見しました。
20年前に千葉の某駅の入り口で恋人と待ち合わせていたであろう女性が酔払い運転の暴走車にひき逃げされ、ちょうど待ち合わせの時間に居合わせた彼がすぐに救急車を呼んだのも空しく、彼女は即死だったそうです。
A子さんはこの事故の件を管理人に話すと、この事件を知っていた管理人は遠い目をしながらこう話したそうです。
この夫妻の娘は黒髪がとても綺麗で腰近くまであるロングヘアーで、漆黒のような黒髪もあいまって「やまとなでしこ」という言葉がぴったりのとても清楚できれいな女性だったそうで、両親も娘の結婚を楽しみにしていたそうです。
しかしこの事件で娘を失った○○夫妻は、娘が死んだ土地にいるのはさすがにつらいという事で夫の実家である地方の田舎に引っ越していったそうです。
現実に存在するはずもない手紙になんともいえない違和感を覚えながらも、いたたまれなくなったA子さんはこの手紙を田舎にいる両親に送ろうかとも思いましたが、過去のつらい思い出をぶり返させてしまうのも忍びないと思い、あるお寺の住職に渡して供養してもらう事にしました。
お寺の住職に手紙を渡し終え、心の中で手を合わせて女性の冥福を祈りました。
そしてA子さんは千葉に帰るために地下鉄のホームで電車を待つことにしました。

時間帯がよかったのか待っている人はだれもおらず、一人でベンチのような腰掛に座って晩御飯のおかずどうしようなんて他愛もない事を考えていると、地下鉄に列車が入ってくるのを知らせるアナウンスが鳴り響きゴゴゴゴーと列車がやってきました。
腰掛を離れ、誰もいないホームで黄色い線に足を運ぶとふと階段方向から懐かしい声がしました。
声の主は学生時代の親友のN子でした。
しかしN子の顔色がなんとも優れないのです。
体の調子が悪いのかなぁと思いながらも久しぶりの再会ということで…というより、N子の強い押しもあって電車には乗らず駅の中にある喫茶店でお茶でも飲もうという事になりました。
懐かしさのあまり2人は時間がたつのも忘れて卒業してからの事や付き合ってる男性の事などを話しました。
そして話題もつきるとA子は不思議な手紙の件をN子に話しました。
するとN子の顔色がより一層真っ青になったのでした。

手紙の話を聞いてしまったN子は言える筈もありませんでした。
先ほど駅のホームに進入してくる列車に向かって歩きだすA子の後ろに、やけに古い服装をして腰まである黒髪の女が鬼のような形相でA子をホーム下に落とそうとしている姿があったことを…

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