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開かずの部屋

2019/03/17

私が通っていた高校は、奈良県の中部にあり、
宗教の総本山として有名なT市にあった。
そもそもT市は宗教の本山という理由で、
自殺の数も多く、心霊系の噂には事欠かなかった。
私は県外から受験したため、寮に住んでいた。
寮は1年生から3年生までが一緒に生活し、
1年生は1階、2年生は2階、3年生は3階、
という構成になっていた。
私が入寮して半年ちょっとぐらい経った頃だろうか、
日本でインフルエンザが猛威を振るい、
私の寮も例外では無く、多数の生徒が感染した。
寮というのは流行り病が流行ると、
広まるのが恐ろしく早く、
そのため管理側には素早い対応が求められる。
その寮には、隔離用に3階に6個の部屋があり、
その部屋に感染者が閉じ込められる。
流行してから1週間後には、
既にその6個の部屋が全て満室になってしまった。
これ以上増えたらどうするのだろう?と思っていると、
運悪く、私がインフルエンザにかかってしまった。
そして連れて行かれたのは、
普段は誰も行かない4階にある部屋。
その部屋は寮生からは
「開かずの部屋」
と言われ、ヤンキーな先輩ですら、
タバコの吸える絶好の場所にも関わらず、
そこには入ろうとはしていなかった。
その4階の部屋に連れていかれ、中に入ると、
既に2人の先輩が布団に入っていた。
私も高熱のせいで、
布団を引くと直ぐに眠りについた。
その後2日間、何事も無く、
先輩と3人でその部屋で高熱にうなされていた。
そして3日目、私たち3人は熱も引き、
多少の鼻水と喉の痛みだけになり、
明日からは自分の部屋に戻り、学校にも行けると話していた。
その3日目の夜、学校大好きであった私は布団に入り、
明日友達と話す話題などを考えていた。
その内に眠気に襲われ、意識が無くなった。
何時ごろだろうか、目覚ましで目が覚めた。
目を開けるとまだ真っ暗で、
恐らく深夜であることは間違いない。
私の寮では、各個人が自分の目覚ましを持っていて、
自分の起きる時間にセットして起きる、という習慣があった。
その目覚ましの音は私の目覚ましではなく、
恐らく2人の先輩どちらかのだった。
2分ほど鳴っていたが、
急に、「ピッ」っと鳴り止んだ。
私はまた直ぐに眠りに付いた。
どれぐらい経っただろうか、
また同じ音の目覚ましが鳴った。
「ジリリリリリリィイイイイ」
いい加減に腹が立ってきた私は、心に中で、
明日の朝に先輩に文句を言ってやろうと思っていると、
また「ピッ」っと消えた。
そして、更にもう一度鳴った。
「ジリリリリィィィィィィィ」
私は限界を感じ、布団から這い出して、
その音の鳴るほうへ這って行った。
そして手探りでその目覚ましを見つけ、
思いっきり手で叩いた。
その時だ。
皆さんは、誰かに見られるという、
視線を感じるという感覚が分かるだろうか?
その時まさに私はその感覚を体全体で感じた。
しかし、その感覚が普段と違うのは、一人に見られている、
のではなかったからだ。
何百人の人に見られている、
感覚があったのである。
私は怖くなり、目を瞑ったまま、自分の布団に潜り込んだ。
それでも視線は無くならない。
気の短い私は、意を決して被っていた布団を放り投げて、目を開いた。
最初は周りを見たが、何も変わったことは無い。
そして気のせいか・・と思い、天井を見た。
そこには何百、何千という顔が、
何十にも重なり、私を凝視している光景があった。
私はホンマに怖くなり、布団に潜り込み、
目を閉じて神に祈った。
すると、どこからか、
T教のお経が聞こえてきた。
その後の意識は無く、気が付くと朝だった。
これは実体験であり、嘘ちゅいます。

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