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約束

2019/01/28

高校時代に僕がオカルトで師と仰いでいた人がいた。
僕はその人の事をドーモさんと呼んでいた。
ドーモさんは高校が自宅から近い癖に
何故か一人暮らしをしてて、
当時はよく遊びに行ってた。
一人暮らしってもマンションとかじゃなく、
ぼろい一軒家
(しかも物置に使われてたらしくがらくたで溢れかえってる)。
親の持ち物だから家賃の心配はないわけです。
当時はかなりうらやましかった。
高三になったばかりの頃だったと思う。
春の肌寒い夜、
僕はドーモさん家で酒(生意気にも)を飲んでいた。
その日ドーモさんは、
部屋の整理をしながら僕と飲んでたんだけど、
いきなり
「あ!なつかしいもん見っけ!」
と叫んだ。
僕が興味津々に見ると、
なんて事はないただの絵本だった。
おもしろい物が見れると期待した僕はがっかりして、
また酒を飲んでた。
ドーモさんは整理の手をとめ
絵本を読んでいる。
しばらく携帯をいじりながら一人酒を飲んでいると、
なにやらドーモさんの様子がおかしい。
ページを開いたまま固まっている。
僕は『?』な感じで、様子を見ていると、
ドーモさんは
「…そうだった。」
と呟いて、ページをめくっていき
絵本を読み終えた。
整理をやめたらしく
僕の前に座り酒を飲みはじめた。
僕が
「そうだったって何が?」
と聞くと、
「映像が記憶をひっぱってきやがった」
と呟いた。
ドーモさんは少し顔色が悪いみたいだった。
僕がその意味を聞こうとすると、
ドーモさんは自分が子供だった時の事を語りだした。
当時、この家が物置だった頃(今もほぼ物置だが)、
ドーモさんはよく遊びに来ていたらしい。
秘密基地みたいな感じかな?
お菓子や絵本などを持ってきて、
一人の時間を堪能してたらしい(子供の癖にw)。
その絵本を読んでる時に、幽霊を見たって。
そして約束を交わしたらしい。
なんでも当時ガキだったドーモさんは幽霊に対する耐性がなく、
ガクブルで一度見てすぐ、下を向きっぱなしだったらしい。
(つまり、読んでいた絵本のページをずっと見てた)
その幽霊はドーモさんを連れていこうとしてたらしく、
ドーモさんは「嫌だ」とくびを横にふっていたけど、
あまりにしつこいので
「大人じゃないから知らない人についていけない。」
って叫んだらしい。
(全然ガクブルってないようなw)
それから幽霊は消えたらしいんだけど、最後に
「じゃあ大人になったら連れていく、約束。」
って言ったらしい。
むかし話を終えたドーモさんは酒を煽った。
僕は
「は?何それ?何で今まで忘れてたん?」
と当然の質問をした。
ドーモさんは
「小2の頃に自力で忘れた。」
と平然と言った。
自力で忘れる?不可能じゃね?
僕がそんな事を思ってると、
「あれ?ちょっと待ってこれ、
あの時記憶と一緒に捨てたはず……
2冊あった?待てよ…」
とドーモさんがキョロキョロまわりを伺いだした。
この時点でついていけなくなった僕は帰る支度をし、
最後に質問した。
「約束…どうするん?」
ドーモさんは満面の笑みで答えた。
「約束は破るタメにあるのだよワトソン君。」
僕はそうこなくっちゃ!
と良い気分(微酔いだったし)で家に帰った。
でも高校を卒業してから、
ドーモさんは居なくなった。
家族でさえも行方は知らないらしい。

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