廃墟と化した病院
2018/08/07
私は霊的現象は信じていませんでした。
私の周りに居る「自称霊が見える」人達の話も全く信じていませんでした。
ですが、今では信じています。
信じざるを得ないと云うのでしょうか。
丁度1年前の話になります。
私とH(男)とK(男)は幼馴染。
小さい頃からいつも一緒でした。
その日も3人でN県にある、廃墟と化した病院に肝試しに行こうとなったのです。
時刻1時。
真っ暗で周りは何も見えない。
たった一つの懐中電灯を頼りに歩きました。
夜中の病院って本当に怖い。
霊的に、とかじゃなくて理屈無しに怖い。
雰囲気だけで怖い。
余りの怖さに失禁しそうになった私を見て、やはり肝試しは明日にしようとなりました。(きっとHもKも怖かったんでしょうね。)
翌日昼ごろ。
雨が降っていましたが、明るく、これなら行けそうと思っていました。
病院内に入ると、イヤ~な雰囲気。匂い。
暑いはずのに空気が生ぬるい。寒気がする。
私達は適当に病院の格部屋を廻りましたが、少し飽きてきました。
幽霊なんて居る筈もなく、私は内心ホッと安心していたのです。
そろそろ帰ろう、HだったかKだったかがそう言いました。
するとその時、突然
「カーンカーンカーン・・・」
階段をハイヒール等で歩く足音が聞こえてきたのです。
もうそれだけで大パニック。
HもKも、勿論私も悲鳴もあげられず、その場で立ちすくむだけ。
普通こんな状況でしたら必死に走って逃げますよね。
でもその時の恐怖感と云えば、足がすくみ、身動き一つ出来ない。
だんだん足音が近くなってくるのが手に取る様にわかる。
その時でした。
Hが大声で
「走れえぇぇぇぇっぇぇぇぇぇーーーーーーー」
と言ったんです。
私とKはハッとし、3人でダッシュで病院から逃げ出しました。
漸く車まで戻ると急いで車を出し、無事に近くの食事処の様な場所まで着いたのです。
車の中でも、そこに着いて数分の間も、私達は無言のままでした。
Hは汗をビッショリ掻いていました。
Kは泣いていました。
私はただただ呆然としていました。
「俺たちの他に肝試しをしていた奴が居たんだ。きっとそうだよ。」
Hは自分にそう言い聞かせるように言いました。
私とKは
「ウン、ウン、そうだよな、それしかないよな」
と返しました。
そうして私達は納得し、帰ったのです。
次の日、Kから電話がありました。
「お前見たか?」
そう言ってきたのです。
「何を?」
そう返すしかないじゃないですか。
でも本当はわかってたんです。
Kは「何か」を見た。
いつも強気のKが霊を見て泣く?私より怖がる?おかしい。
Kは続けてこう言いました。
「俺、見たんだ。病院で。足音が聞こえて・・・逃げ出しただろ?その時、俺、チラッと後ろを振り返っちまったんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・何を見たの?・・・・」
「女だった。俺たちが逃げると共に女も走ってこっちにきたんだ。真っ黒で長い髪をバサバサさせて、すげえ勢いでこっちに向かって走ってきたんだ。ものすごい形相だった。本当に殺されるかと思った。だけど、・・・笑ってたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
現在、HもKも私も今までと変わりなく仲が良いです。
でもあのときのことは誰一人話さない。
タブーになっているんです。
Kは普段嘘なんて絶対吐くような人ではないし、電話の内容も本当だと思います。